「国際機構」とは? (国 際 機 構 の 概 念)

 

国際機構とは何か (国際機構の概念(定義))

 

  国際機構(次の項目で述べますが、国際機構も、国際組織、国際機関と呼ばれるものも全く同じものです)とは、国連や世界銀行や欧州連合(EU)などのように、国際社会の約束にもとづいて、各国がつくった組織体のことです。

 やや難しい表現(法的な定義)だと、たとえば「国際法上の意思の合致 (通常は条約の形式による) に基づき、 複数の国家から構成され、 一定の目的の下に活動する、 組織体(常設の機関を有する)」などと言うことができるでしょう(拙著、1997年、17頁)。 

 なお、法令上は、きちんとした定義はされておらず、「条約法に関するウィーン条約」や「国と国際機関の間及び国際機関の間の条約法に関するウィーン条約」という国際法においては、「国際機関とは、政府間機関をいう("international organizations" means an inter-governmental organizations)」との規定があるだけです。

国際機構が、国家と違うのは機能的存在(対照的に言うならば、国家や構想上の世界連邦は、権力的存在)として、何か特定の目的(任務、機能、役割)が与えられており、それ以外のことをするこができないということです。

 また、国際機構は、いわゆるNGOとも違います。NGOは、国際社会ではあるいは国連との関係では、国際的な組織をさしますが、それは、非政府間国際機構とか、国際民間団体などと呼ばれています。ようするに、非政府の(つまり民間の)、そして非営利の団体です。それ以上の定義をすることはできないでしょう。

 国連(経済社会理事会)では、「政府間協定で成立したものでない国際団体」( ECOSOC RES.1296(XLIV)(1968/5/) )、国際協会連合(Union of International Associations)では、「1.目的−、真に国際的な目的を有していること(二国間の友好団体や個人を記念する団体は除く)。2.構成員−、三ヶ国以上の個人または団体が、完全な投票権を得て会員となっていること。その団体の活動分野での有資格者(団体を含む)に加入が開かれていること。3.規約を有し、管理機関および役員を会員が定期的に選出すべきこと。本部事務所を有し、活動に継続性があること。4.役員−、一定期間すべてその役員を同一国民が独占している場合には、本部所在地ならびに役員を一定期間ののち、持ち回りとしていること。5.財政−、活動資金の実質部分を三ヶ国以上から得ていること。会員への利益配分を意図しないこと。6.他団体との関係−、他の団体と正式な関係をもっている場合には、独自の活動をなし、別個の役員をもっていること。7.活動−、現在活動していること。」(福田菊『国連とNGO』三省堂、一九八八年、二−四頁)とされています。

 

国際機構という呼び方 (国際機構の呼称

 

 「国際機構」という名称(呼び方)のほかに、同じものを、「国際組織」または「国際機関」と呼ぶこともよくあります。しかし、最近は、国際機構と呼ぶことが多いようです。その理由のひとつは、少し似ている他のものとの区別を明確にするためです。

 従来の国際法学においてはむしろ「国際組織」という用語が一般的でした(6)。しかし、この用語は、国際社会の組織化という現象一般を表現することもあります(7)。ですから、個々の具体的国際機構ではなく、一般的・抽象的に国際組織を表現する場合との区別が難しくなります。さらに、後で考える「国際組織法」という場合、それは「国際機構の組織法」を意味するのですが、「国際組織の法」、つまり国際組織をめぐる法一般との区別が困難になります。後者は、「国際機構」という呼び方を採用していれば、「国際機構法」と表現可能で、Shermers によるところの law of international organizations に当たります(8)。

 その理由と、また、国際政治学、国際経済学等においては、一般に「国際機構」という名称が用いられることが多いので、おそらくそれらとの相互影響もあって、最近では国際法学でも「国際機構」と言われることが増えてきました(9)。なお、国際法、国際政治、国際経済(さらに、国際社会、文化)といった枠を超えて、国際機構を包括的、多面的に考えようとする場合には、「国際機構」が積極的に選択されるようです(10)。ところで、「国際機構」と「国際組織」は、まったく同じ概念を表現する用語ですから、国際法学において「機構」が用いられることもあり(11)、逆に、「国際機構」という表現が多く見られる国際政治学・国際経済学等においても「組織」が用いられる場合がまま見られます。(12)。

 「国際機関」も国際機構と同一の概念を表現するのですが、これは、法令上、行政上の用語で、主として外務省関連の公文書、資料等において多く用いられています(13)。また、個々の国際機構の日本語での正式名称(法律上の用語)の一部として、たとえば、「国際労働機関(ILO)」、「国連教育科学文化機関(UNESCO)」、「世界保健機関(WHO)」のように用いられています(14)。もっとも、「法学」では「機関(organ)」という用語は特定の概念を表すので、個々の国際機構の内部にある総会、理事会、事務局などの「国際機構の機関」との混乱を生ずるとして、学術上はこの用語を避ける(15)のが一般的です。いずれにしても、上に述べた三つの呼称は、すべてまったく同一の概念を表現するものです。

 それらに対して、「国際団体」という表現は、近頃は、「国際機構」=「政府間国際機構」のみならず、「非政府間国際機構(NGOs)」をも含む概念として用いられることが多いようです。

 なお、外国語においても、「国際機構」に該当する用語としては、主に、 "international organizations(16)", "organisations internationales(17)", "Internationalen Organisationen"(18)が用いられ、時には、"international institutions"(19), "institutions internationales"(20)も使われています。

   

     続く......

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